もうずい分と経つが、今でもたまに思い出す光景がある。
それは、東京から上海へ引っ越す当日のこと。 麻布十番駅近くのマックでの一コマ。 引っ越し業者さんが全ての荷物を運び終えたので、 私は当時5歳の息子の息抜きにと、 マックへお散歩&スナックタイムに来た。
家からストレートに行けば15分ほどだが、 いつのもように寄り道&遊びながらなので、 まあ時間がかかった。 が、いつものことだし、 これからの上海での生活のことで ワクワクでいっぱいだったことを覚えている。
平日の夕方のマックは学生や社会人で賑わっていて、
2階の2人席だけ空いていたのでそこに座って
息子は大好きなセットのおもちゃに
るんるん気分でハンバーガーを食べていた。
と、隣の席がいつの間にか空いていて、
そこに息子と同じような年頃の女の子と
お母さんが座った。
どうして気づいたのかというと、
2人の雰囲気がとても重々しかったからだ。
女の子は明らかに元気がなかった。
見なくても感じられるほどに。
息子もその雰囲気を察知して
黙り込んてしまったほどだ。
お母さんも女の子も紺色のきちんとした装いだった。
聞くつもりがなくても耳に入ってしまう距離。
お母さんは、
「それで?どうだったの?」
女の子は、
お部屋に入るときに靴を揃えるのを忘れてしまった旨を
とても正直にお母さんに伝えた。
するとお母さんは、
「なんてことをしてくれたの???」
と声を荒げて詰め寄って怒った。
それは愛を感じられない責め方だった。
女の子は小さく小さくなって何も言えずにいた。
息子は見ないふりをするのが精一杯の様子だったが、
異様な雰囲気を感じとっていた。
私はいてもたってもいられない気持ちに襲われて、
その女の子を抱きしめてあげたい気持ちでいっぱいになっていた。
「あなたは何も悪いことしていないよ。」
ちょうどその頃は有名幼稚園、小学校のお受験の時期だったのだ。
麻布十番付近には有名な私立の幼稚園、小学校があることは知っていた。
我が家の場合、以前にも書いたように、
息子は自由な魂を貫くために私と夫を選んで
生まれてきたため、
そういう世界とは無縁だったどころか
公立の幼稚園にも行かないと決めてそれを貫いている子だった。
当時私は、
周りのきちんとしたお母様たち、お子様たちを
「すごいなあ!」という称賛の気持ちで見ていた。
どうしてうちの息子は他の子のようにできないのかな?
と当時は何もわかっていなかったため
悩んでいたりもした。
隣の女の子とお母さんは
おそらくこの日に向けて
親子ともに一生懸命に取り組んできたのだろう。
女の子はお母さんが大好きで、
怒らせないように、
機嫌を損ねないように
してきたのかもしれない。
靴を揃えるのを忘れた、
そのことを正直に伝えて、
大好きなお母さんに責められて、
静かにひどく自分を責めていた。
私は自分の小さい時とその女の子を重ねていた。
母との関係はその2人ととても似ていた。
女の子の気持ちが痛いほどわかった。
私は女の子にひどく同情してしまって
心がすごく痛くなり、
でも何も言えるはずはなく、
何もできずにその場を後にした。
その後10年の間に
何度もその光景を思い出した。
その度に女の子の心に自分を重ねて
胸が痛くなっていたのだが、
ある時からそのお母さんの心が
理解できるようになっていた。
それどころかお母さんの心を
癒して愛を送りたいという気持ちになっていた。
お母さんも傷ついていた。
私はこの目の前で起こった出来事を
受け入れていけるようになっていた。
お母さんもいろいろな思いから
女の子もその学校に行きたいという憧れから
一緒に頑張ってきたのかもしれない。
その時の切り取られた出来事だけで
ジャッジしてしまうのは
本当に身勝手で失礼だったなあと
心から申し訳なく思うようになった。
そして、今では思い出すたびに その2人にエールを送っている。 気づかせてくれてありがとう。 子育てはみんな一緒じゃなくっていいんだ。
伝えたいのは
公立か私立か、
受験がいいか悪いかということではない。
子どもによって
合う環境というのが必ずあるので、
そこに受験が必要であるならば
家族で取り組むべきだと思う。
息子の場合は、
今プライベートの高校に通っている。
日本の公立の幼稚園に行かなかった息子は、
その後、英語が全くできないのにも関わらず、
主人の転勤先の上海で、
ブリティッシュスクールの幼稚園から2年生までを過ごし、
その後ずっと英語の環境の学校に身を置いている。
その後の日本ではインターナショナルスクール。
そして小学5年生からは
転勤でアメリカへ行くことになり、
カリフォルニア州ベスト5と言われるプライベートの小学校に、
受験勉強しないでラッキーなことに入れる流れとなり、
そこから勉強を始めて、
高校生の今も毎年成績優秀者で表彰されている。
それと同時に
彼は11歳で出会ったリズムゲームを毎日何時間も練習し、
後に世界ランキング1位となった。
顔出しも声出しもせずYouTubeを始め、
世界中の仲間と交流したのちに、
やりきってパタリとやめた。
今はピアノにハマっている。
毎日何時間も練習しつつ
オンライン仲間とも交流しながら
勉強も自分なりのやり方でやっている。
夫と私がしてきたことは、
息子の言うことを理解し、
必要な環境を用意し、
必要なアドバイスし、手助けをした。
息子が自分にベストな環境を
引き寄せたような気がしている。
私が今子育てに悩んでいるお母さんたちに伝えたいのは 今のお子様の声を聞いて 心を守ってあげることが その子の愛を育むことになって、 その後必ず、そうしてよかったと思う日が 来るということ。 子どもの心を大事にしただけの 引き寄せが起こってくる。 それは子どもが、そしてお母さんが、 より合う環境であったりする。
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